アバクロのメッセージTシャツ、アジア系から猛反発

アバクロ 差別問題Tシャツ 2002年、アバクロンビー&フィッチは左上のイラストがプリントされたTシャツを発売しました。
 そこに記された“WONG BROTHERS LAUNDRY SERVICE. TWO WONGS CAN MAKE IT WHITE”という文言が、アジア系ほか少数派民族を、強く刺激したことはご存知でしょうか?
 直訳すると「ウォン兄弟のクリーニング専門店。ウォンが二人揃えば真っ白に」。ここで気付いてほしいのが、“Two wrongs don’t make a right”という言い回し。「悪事に悪事を返しても善事にはならない(不正は不正)」という意味ですが、Wongsとwrongs、Whiteとrightが韻を踏んでいます。まるで、白人が正しく(right)、Wongsが間違い(wrongs)と言っているようにも受け取れます。さらには、アジア人特有の、強いなまりを茶化しているようにも。
 さらにそのイラストは、アジア人に対する典型的なステレオタイプから描かれたようで、小ばかにしている感は否めません。

アバクロの差別Tシャツは面白い?  アジア系アメリカ人の抗議より、A&F社は謝罪。Tシャツを50州(311店)からリコールしました。さらに、落札価格が500ドルにまで膨れていたeBayのオンラインオークションからも、(eBayの)企業ポリシーに反するとして撤去されました。
 ちなみにCNNが実施した全国規模の世論調査によると、ほとんどのアメリカ人は(2:1の割合で)、問題のTシャツを全く侮辱的、攻撃的ではないと感じている、とのこと。『ほとんどのアメリカ人』のうち、白人が何割かによっても、答えは変わってくると思います。
 また、同年、同社は子供向けのラインからソングを撤去。ティーンにもならない13歳未満の子供向けサイズのソング(Tバックに近いショーツ)をデザイン、販売していたのです。しかも商品の表には、“Eye Candy(目の保養)” や“Wink Wink(ウィンクウィンク)”といった文字が書かれていました。これは、いくらなんでもやり過ぎです。
<画像左:Owen Sallisbury / Daily Nexus>Tシャツを着た白人の男の子が、「何で? これ面白くない?」と言っています。隣のアジア系の子は、不快そうですね。

アバクロの問題Tシャツ Tシャツにまつわる論争は、2004年にも二度ありました。
 まずは、“It’s All Relative in West Virginia”と書かれたもの(写真右)。「ウェストバージニア州では全員が親戚同士」と、同州があたかも近親相姦の温床である、といったステレオタイプ的メッセージロゴを、商品に記したのです。
 これに怒った州知事はA&F社に対し、即刻Tシャツの販売中止と回収を求めましたが、A&F社はこれを拒否。そのまま継続して販売しました。
 Tシャツのメッセージを『面白い』と思う人、『屈辱的だ』と思う人、受け取り方はさまざまです。面白いと思って笑うか、不快な気持ちにさせられるか、その境界線はとてもデリケート。アバクロほどの人気アパレル業者が渡るには、あまりに危ない橋だとしか思えません。その影響力を考えると、少々無責任と感じます。

アバクロの問題Tシャツ 二つ目は、つり輪の体操選手のイラストと共に書かれた“L is for loser(LはルーザーのL)”のTシャツ(写真左)。L字体勢になった体操選手を負け犬であるかのごとく、茶化したTシャツです。
 これは、米国体操協会の委員長が「スポーツをからかった」とアバクロ商品のボイコットを呼びかけたことから、2004年10月に販売が中止されました。
 A&F社はメッセージTシャツの常習犯、と言えるかもしれません。何故なら、これ以外にもまだ、いや、また、あったからです。




アバクロの問題Tシャツ まだ終わりません。次は2005年。ペンシルバニア南西部の女性と女子高生たちが、“girl-cott(ボイコットに対してガールコット)”と呼ばれるものを決行しました。その理由は、“Who needs a brain when you have these?”と書かれた、アバクロのTシャツ(写真右)にあります。
 「これ(胸)があれば、脳みそなんて誰がいるの?」というそのメッセージで、またもや物議をかもしました。ほかにも、“Do I Make You Look Fat?(私、あなたを太くみせてる?)”といったTシャツ(写真左)がありました。
 同ブランドがティーンに与える影響は多大で、アバクロモデルのような『アバクロンビー・ガール』になるために極端なダイエットにはしる女子高生や、アバクロの男性モデルのような容姿でないと、自分には価値がないと思い込む男子高生もいるようです。そんな大袈裟な、と思うかもしれませんが、それが、ティーンエイジ・カルチャーなのだと思います。
 女性の品格をおとしめられたとして、団体はNBC(米国の民放局)の全国放送でも声高々にA&F社を非難。そして11月5日、A&F社は『ガールコット』と、メディアからの注目、そのプレッシャーに耐えかねて、問題のTシャツを店から撤去しました。
 度々物議をかもすアバクロのTシャツですが、社会的に問題にならないよう、社内に倫理委員会なるものが存在するそうです。ですが、「委員会は休暇中のときもある」と最高経営責任者のジェフリーズはインタビューでコメントしています。そのいいかげんさが、命取りにならないと良いですね。







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