今はなき幻のアバクロ『マガログ』(きわどい季刊誌)

アバクロ“マガログ” アバクロンビー&フィッチ ブランドを確立させるにあたり、現最高経営責任者であるジェフリーズは、“A&F Quarterly”という季刊誌の発行に乗り出しました。これは、“sex sells(セックスは売れる、エロは売れる)”という概念に基づいた、今はなきアバクロの特徴的なブランディング戦略でした。
 A&F Quarterlyは1997〜2003年までの四半期ごとに出版され、アバクロの店頭にて7ドル(約830円)で販売されていました。その内容はかなり際どいもので、露出度の高い(ほぼヌード)モデルの写真をちりばめ、商品の写真は最小限に留められていたそうです。購入には、18歳以上であることを証明するIDの提示が求められましたが、どこまで実行されていたかは怪しいものです。
 別名“Magalog(マガジンの様なカタログ、カタログ以上のマガジン)”、発行部数は20万部というから立派。1990年代後半には、若年層の間でかなり読まれていました。さらにはそのホモエロチックなマーケティングがゲイにうけ、ゲイマーケットからも支持されるようになったそう。
 1999年には最初のテレビコマーシャルを展開。ここで、売上1億ドルの壁を突破します。が、2000年になると、さまざまな団体から批判され、経営は悪化。ですが、そんなときでもジェフリーズはShowtimeで放送されていたTVドラマ・シリーズ『Queer As Folk』に衣装を提供することは拒んだそう。ちなみにこのドラマは、A&F Quarterlyに書かれる内容と、多くの類似点を持っています(例:若く、性的にアクティブなティーンや大人を描いている)。が、要はゲイの話なのです。飲酒、グループセックス、同性愛などを美化するマガログの内容と、かぶる部分は多かったのですが、どうやらジェフリーズは、アバクロンビーを直接的にゲイと結び付けたくはなかったのでしょうね。

 2001年にはやり過ぎとしか思えないカタログ、服をまとわない男女の群れをフィーチャーし、“XXX(キスの印で、キス、キス、キスという意味で手紙の結びとしてよく使用されますが、アダルト映画のレイティングにも使用されます)”というタイトルのものを発行。これにはさすがに批判が強かったようで、プレッシャーに耐えかねたジェフリーズは、これを回収。

アバクロ“マガログ”アバクロ“マガログ” しかしその際どさはとまらず、2003年のホリデーカタログ(クリスマスシーズン/冬)で、オーラルセックスに関する記事を掲載し、明らかに一線を越えてしまいます。表紙には“280 PAGES OF MOOSE, ICE HOCKEY CHIVALRY, GROUP SEX & MORE…(280ページにおよぶ、ヘラジカ※、アイスホッケー騎士道、グループセックス、その他いろいろ)”という文字。(※ヘラジカは同ブランドが使用しているロゴです。)
 特にAmerican Decency Associationからは強烈に批判されました。アメリカのサイトで“flat-out pornographic images(あからさまなポルノ写真)”と書かれるぐらいなので、その露出度はかなり極端なものだったと思われます。
 カタログに登場するモデルは皆18歳以上ですが、一見するとティーン風。ターゲットは18〜24歳。購入者は18歳以上でIDを提示しなければなりませんが、販売員の多くは18歳以下で見ること自体が許されていません。しかも、その内容はセックスやグループセックスを助長し、美化するようなもの。
 結局そのカタログは、「新しい香水“NOW”を置くスペースを確保するため」に、クリスマスシーズンの真最中にリコールされました。小売業者にとっては、かきいれどきのホリデーシーズン。痛い話だったと思います。ちなみにマガログに登場するモデルのほとんどが白人であったことも、非難の対象となりました。


 2004年5月には、無料、18歳以下にも販売可能な、おとなしいカタログ(タイトル“young”)へと刷新。しかしそれでも尚、内容はPG-13レベルだと非難する団体もあったようです。アバクロの広報担当は、同カタログを「フォトエッセー」と説明。このリリースにあたっては、まず2004年4月から、少数の季刊誌(quarterly)購読者に向けて配布。翌月5月にリリースを開始しましたが、同社には珍しいほど地味だったよう。しかしその内容は、CCV(Citizens for Community Values)に言わせると、「高い露出度と刺激的なポーズは、あまりに挑発的過ぎる」。「小売業者は衣類を売るべきであって、ティーンに対しセックスを利用して売るのは無責任だ」、というのが彼らの言い分です。ごもっともです。







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